イオンファンタジーのエデュテイメント
インタビュー
2020.07.31 UP
イオンファンタジーは、「世界中に楽しい『あそび×まなび』を届けるエデュテイメント企業」を目指す方針を2019年から打ち出しました。
これまで世の中に「あそび」を届けてきた企業が、なぜ「まなび」の分野に挑戦するのか?
代表取締役の藤原信幸にインタビューを行いました。
1968年8月20日生。日本マクドナルドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンで飲食分野の経験を積み、2004年イオンファンタジー入社。海外プロジェクトマネジャーやイオンファンタジーマレーシア取締役、中国事業責任者などを歴任し、2018年より現職。
エデュテイメントとは、当社が今まで事業として取り組んできた「あそび」を通じてお子さまのもつ能力や意欲、可能性を引き出すための「あそび×まなび」の融合のことをいいます。
机で勉強する学習とは異なり、「あそび」が持つ力を使って結果的に「まなび」につなげます。例えば、体を動かしながら算数を学べたりしたら面白いですよね。
「あそび」の中にはたくさん「まなび」があるということを体感していただくことが「エデュテイメント」だと考えています。
我々の提供してきた「あそび」も「まなび」という価値になり得ることを、もっと世の中に打ち出していきたいからです。
これは私が中国事業で経験したことからきています。中国では非常に教育熱心なご家庭が多く、子どもたちは平日、学校でも塾でも勉強し、遊ぶ暇がありません。そんな子どもたちを見守る親としては、せめて休日だけでもゆっくり遊ばせてあげたいという気持ちがあります。そういった想いに応えられるからこそ、私たちが提供するモーリーファンタジーなどのアミューズメント施設、FANPEKKA(ファンペッカ)やキッズーナなどのインドアプレイグラウンドが中国のお客さまに受け入れられたのです。
ただし、遊び一辺倒の施設では、お客さまに完全にご満足いただくことは難しいことも分かっていました。親の心理としては、子どもにゲームをさせることに懸念を持たれている側面があることが調査で判明しています。そこで、入口は遊びでも、店を出るまでにひとつ学ぶことがあった、何か新しいことができたといった体験を得られるのが大切であると思っていました。
当社が展開しているプレイグラウンド「スキッズガーデン」では、以前からお子さまの遊びをリードする「プレイリーダー」を通じて「まなび」につながる遊びやイベントを提供してきました。プレイリーダーと一緒にゲームすることで自然に数の数え方や言葉を学ぶことができたり、子どもたち自身に発言・発表させることで表現力や考える力を育んだりと、子どもの成長を促す「まなび」が得られるような「あそび」のイベントです。小学校教育で必修化されたばかりで、今まさに注目されているプログラミングに触れられるイベントも過去に実施したことがあります。
我々の提供するものも「まなび」になり得る、これをもっと明確に世の中へアピールしていきたいという想いから、「エデュテイメント」の事業をスタートすることにしました。「あそび」の中に「まなび」の要素がある「エデュテイメント」を提供する場所なら、親が子どもを連れて行きたいと思う強い動機を作り出せるはずです。
「あそび」から「まなび」のビジネスに180度転換するということではなく、今まで育ててきた「あそび」の事業を軸に「まなび」を提供し、イオンファンタジーならではの「エデュテイメント」を育てていきたいと考えています。
現在の国内アミューズメント産業界では、アミューズメント施設の売上規模は年間約5200億円程度と言われています。予測では、この市場の10年・20年後の成長は限定的であるという見方が主流です。少子化も進む中で、今までと同じことを続けるだけでは成長がないと危機感を持ち、次なる柱を作ることが必要です。
それでは新たに大人やシニア向けの事業を開拓するのか、といった議論や実験を行った中で、やはりイオンファンタジーが創業以来20年以上取り組んできた子どもを軸にした事業に取り組んでいきたいと立ち返り、結果的に、エデュテイメントの将来性が大きいのではないかと行きつきました。
教育分野の市場規模は年間5兆円以上と言われています。新たに教育市場へ真正面から切り込んでいくことは難しくても、「あそび」と「まなび」の中間地点はまだ空白地帯であり、未成熟の市場です。その市場を新しく作っていくということは、大変な困難も伴うでしょうが、チャレンジしがいがあります。
この想いをまず言葉で表現したいと思い、新しいビジョンとして「子どもと家族の笑顔のために、楽しい『あそび×まなび』を届けるオンリーワンのエデュテイメント企業」を目指していくというメッセージを出しました。
次は具体的に施設として実現していこうということで、2019年は神奈川県に「キッズーナプラス」、2020年4月には鹿児島県に「キッズアスレチッククラブ ビヨヨンド」と新業態をオープンし、イオンファンタジーのエデュテイメントを徐々に形にしていっています。
「エデュテイメント」という言葉をストレートに用いるのではなく、あえてひらがなで「あそび!?」それとも「まなび!?」と表現しました。
「?」と「!」というマークを加えることによって、「なぜだろう?」と考えることや、「すごい!」感動する驚きを表現しています。
驚き(!)や不思議(?)と出会ったとき、子どもの頭は興味でいっぱいの状態です。
「!」と「?」をつなげることで、不思議から驚きへ、驚きからさらなる不思議へと、目まぐるしく活動する子どもの頭の中を象徴するシンボルとして「!?」というマークを用いました。
また、「これがイオンファンタジーのエデュテイメント」ときっちり規定するのではなく、「これってあそび? それともまなび?」という「?」の状態で残して、世の中の変動に合わせてエデュテイメントをブラッシュアップしていきたいという想いも込めています。
当社の施設を通じてお子さまに楽しく学びを得ていただきたいという想いが強いのですが、それだけではなく、保護者さまにも「ここに子どもを連れて行きたい!」と思っていただけるような施設を作っていかなければと考えています。
子どもが行きたいところと、行きたくないところ。例えば、学習塾には行きたくないというお子さまもいますよね。また、親が行かせたいところと、行かせたくないところ。ゲームセンターには子どもをあまり行かせたくないと考える保護者さまもいると思います。
この「子どもが行きたいところ」と、「親が行かせたいところ」が重なる「あそびとまなび」の場所を実現していきます。
モデル店舗となる新店をオープンし、エデュテイメントの実験プログラムを試行してみましたが、お客さまの評価は非常に高いです。プログラムに参加したご家庭の保護者さまにお話を伺うと、「うちの子がこんなことまでできるようになるとは思わなかった」と驚きをもってお子さまの成長を感じていただいています。
また、今までアミューズメント施設やインドアプレイグラウンドの現場で接客スタッフとして「あそび」を提供してきたスタッフたちにエデュテイメントの実験プログラムの運営へ関わってもらっているのですが、彼らがお子さまと接してきた経験を活かしながらエデュテイメントをうまく解釈してお客さまへ伝えてくれており、素晴らしいなと感じています。イオンファンタジーがエデュテイメントに取り組む価値、成長の可能性は高いものであると、ますます確信を持ちました。
英語教室、算数教室などのアイデアもあります。従来の当社施設、特にインドアプレイグラウンドでは、平日は比較的空いているのが当たり前でした。ですが、このアイデアなら平日の空き時間と場所を有効活用できます。ご来場のたびに入場料をいただいていた形から、平日は学校のように朝から夕方まで時間割でプログラムを提供して月額定額制でご利用料金をいただき、いつでも遊びにきていただけるような形に育てていければ、新たに安定した収入を生み出すことができます。これまで遊具などハードの魅力でお客さまを呼んでいた業態から、エデュテイメントをキーにプログラムの中身などソフトで勝負する業態へと進化していきます。
明確なゴールはまだ私自身の中にもなく、スタートしたばかりの今は「エデュテイメントとは?」と問いかける実験をひたすら繰り返していくべき段階だと考えていますし、当社のスタッフたちにも「失敗してもいいのでどんどん新しいチャレンジに取り組んでほしい」と伝えています。チャレンジを繰り返す中で、将来的に「これがイオンファンタジーのエデュテイメントだ」という答えを見つけ出していけばいい。
「あそびの力を誰よりも知っているイオンファンタジーだからこそ生み出せる、そんな体験を追求していきたい」とエデュテイメント企業としてのステートメントにもある通り、イオンファンタジーが培ってきた力を活かして、「そんなのもありか!」という分野までエデュテイメントにしてみせます。
1968年8月20日生
2004年5月: イオンファンタジー入社
2005年9月: 業態開発グループマネジャー
2006年9月: 海外プロジェクトマネジャー
2008年1月: イオンファンタジー北京(現イオンファンタジー中国)董事副総経理
2011年3月: イオンファンタジーマレーシア取締役
2012年1月: イオンファンタジー北京(現イオンファンタジー中国)董事総経理
2013年1月: 同社董事長総経理
2014年1月: 同社董事長
2015年9月: イオンファンタジー中国事業責任者
2017年5月: イオンファンタジー取締役
2018年5月: イオンファンタジー代表取締役社長 (現任)
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