イオンファンタジーのエデュテイメント
あそびの研究 レポート
2022.06.30 UP
2022年2月17日(木)に東京大学 大学院 情報学環 藤本徹研究室が主催するオンラインセミナー「これからの子どもたちの遊びと学び」が開催されました。
子どもたちの遊びの環境は時代を経て大きく変化してきましたが、子どもたちの成長を支えるのは豊かな遊びの経験であることは変わりません。デジタルゲームの遊びの中にも、子どもたちの主体的な活動を促す学びのきっかけや関心の種が育つ世界が拡がっています。今回のオンラインセミナーでは、そうした子どもたちの豊かなゲームの遊びと学びについて理解を深め、子どもたちとゲームの関係を捉え直してみたい方に楽しい学びの機会をお届けします。
本記事では、セミナーの第二部・株式会社イオンファンタジーとの共同研究「遊びと学びをつなげる研究」の成果報告のうち、「成果1:ゲームの学びを支援するパターン・ランゲージ」についてご紹介します。
九州大学で心理学・教育学を専攻。『ゲームの社会的活用』について研究、博士号取得(学術)。2016年にボードゲームの習い事「サイコロ塾」を起業。現在は東大の特任研究員としてゲームを活用した学びの研究に従事している。
【目次】
・研究の背景―オンラインでゲームのレッスンを行うトレーナーの支援ツールの必要性―
・パターン・ランゲージとは?
・研究の流れと作成したパターン・ランゲージ
・パターン・ランゲージを体系化した「パターンカード」の一例
・今後のパターン・ランゲージ活用について
・パターン・ランゲージはどのような対象者に広めていくのか
■研究の背景―オンラインでゲームのレッスンを行うトレーナーの支援ツールの必要性―
オンラインゲームスクール「ゲームカレッジLv.99」で行われているのは、オンラインかつゲームを用いたレッスンです。こういったオンラインで行う形態の習い事はコロナ禍で増えつつありますが、これまでの既存の子どもたちの習い事と比べて、ゲームを用いたレッスンではトレーナーに求められる役割が特殊になっています。
例 ・ティーチャー:ゲームの内容を教える
・ガイド:ゲームの内容を教えながら、ゲームにもプレイヤーとして参加する
・ゲームのプロ:ゲームの技術的な問題に対応する
・ファシリテーター:子どもたち同士のファシリテーションを行う
これらの役割は、新任トレーナーでもしっかり習得する必要性があります。そこで、ゲームを用いたレッスンのトレーナーに必要なスキル・態度が習得しやすくなるよう、支援ツールを開発することになりました。
■パターン・ランゲージとは?
パターン・ランゲージとは、対象領域における経験則を言語化したものです。どのような状況で、どのような問題が生じ、それをどう解決すれば良いのかという知見・発想を記述したものですが、マニュアルほど固いものではなく、それぞれのトレーナーが自身の実践に組み入れる具体的な方法を考えるための「コツ」を言語化したものということができます。
■研究の流れと作成したパターン・ランゲージ
まず、既にオンラインでゲームのレッスンを行う実践を行っているゲームカレッジLv.99のトレーナーに個別インタビューとグループインタビューを行い、その経験の中からコツを聞き出していく作業を行いました。
続いて、インタビュー内容をもとに、藤本研究室のメンバーで議論を重ね、パターン・ランゲージの種になるものを抽出しました。4つのカテゴリから成る、全18項目が作成されました。
そして最後に、作成したパターン・ランゲージを「パターンカード」という形で体系化しました。
■パターン・ランゲージを体系化した「パターンカード」の一例
カードの表面にはパターン名、簡単な説明、内容を象徴するイラストが描かれています。裏面には、このパターンを必要とする状況、その状況で起こってしまいやすい問題、解決策、実践した結果が書かれています。解決策については、トレーナー各自が取り入れやすいよう、適度な抽象度で記述されています。
■今後のパターン・ランゲージ活用について
作成したパターンカードを用いて、実際にゲームカレッジLv.99のトレーナー達にワークショップを実施しました。実施後のアンケートでは、概ね好意的な効果が得られています。
今回作成したパターン・ランゲージは、ゲームカレッジLv.99の新人トレーナー研修や定期研修会で活用し、さらなる有用性の検証をしていきます。
■パターン・ランゲージはどのような対象者に広めていくのか
(「パターン・ランゲージは今後どのような人たちを対象に広めていく予定なのでしょうか?」という視聴者の質問に対して)
今回作成したパターン・ランゲージについては、オンラインでデジタルゲームのレッスンを進めていくトレーナー向けに限定されたものです。しかし、デジタルゲームを使って学びを進めていくことを検討されている先生方もいらっしゃいますので、もう少し広い文脈でゲームを学習に用いて、そういった方々を対象にパターン・ランゲージを広げていくことも考えています。
そのためにも、既にデジタルゲームを学びに活用している事例から実践を引き出していき、対象を拡張していきたいという想いはあります。
■セミナーのアーカイブについて
こちらにて、当日のオンラインセミナーのアーカイブを公開しております。
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