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    イオンファンタジーのエデュテイメント

    楽しいだけじゃない!南流石流、
    エデュテイメントダンスとは
    ー振付演出家 南流石さんインタビュー

    振付演出家 南流石さん

    インタビュー

    2021.01.22 UP

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    CMだけでなく「おしりかじり虫」や「くまモン」の振付でも知られる振付演出家・南流石さん。2021年1月に、集中力や自発性を養う子ども向けのダンスプログラム「MOLLY DISCO」を発表し、ますますパワフルに活動の幅を広げています。

    8分のダンス動画とワークショップによって子どもたちの可能性を最大限に引き出す「MOLLY DISCO」とは、いったいどのようなものなのか。愛とエネルギーに満ち溢れる南流石さんの姿勢や信念は、そもそも、どんな経緯で形成されていったのか…? 幼少期の思い出や「MOLLY DISCO」についてお聞きしました。

    南流石(みなみさすが)さん

    3歳の頃に2歳年上の姉の影響でコンテンポラリーダンスを習い始め、その後、クラシックバレエ、ジャズバレエと、意欲的にダンスの幅を広げて行く。16歳の頃にインストラクターとしてダンスを教え始め、20歳でミュージカルダンサー、ストリートパフォーマーに。路上でのダンス活動が話題となり、サザンオールスターズをはじめとする多くのミュージシャンのライブに帯同することとなった。近年は、乳幼児から高齢者まで多くの人を巻き込みダンスでしあわせをつくるプロジェクト「0-100ダンスプロジェクト」に力を入れている。2021年1月に子ども向けのダンスプログラム「MOLLY DISCO」を発表。

    流石組HP
    http://www.sasugagumi.com/

    MOLLY DISCOプログラム
    https://youtu.be/82mkR1S9LKI

    食べきれないなら、お弁当箱を小さくすればいいじゃない!

    「MOLLY DISCO」についてお聞かせいただく前に、まずは南流石さんの子ども時代について教えてください。どのような性格のお子さんだったのでしょうか?

    意外に思われるかもしれませんが、ちょっと悟ったところのある冷静な子どもでした。いまでもよく覚えているのが、幼稚園での「お弁当事件」です。私が通っていた幼稚園には「お弁当を食べきるまで帰れない」という謎のルールがあったのですが、小食だった私は、食べきれずに居残りになることが多かったんですよね。それがイヤでイヤで仕方なく、ある日、走って逃げてしまった(笑)。ところが、子どもですから、10メートルも行かないところで捕まるわけですよ。そのとき「ああ、私は、たったこれだけの距離ですら逃げ切れないのだな」と悟ってしまった。逃げても無駄だと納得してしまったのです。

    その後、「これからどうすればいいんだろう」「逃げる以外になにか道はないものか」と考えに考えて思いついたのが、「そうだ、お弁当箱を小さくすればいいんだ!」というアイデアでした。お弁当箱の大きさについてのルールなんてありませんでしたし、小さくすれば食べきれるわけで。すぐに母に頼んでおままごと用の小さなお弁当箱に変えてもらいました。先生たちもびっくりするやら唖然とするやらで。我ながら「よく考えたな~」と感心しました(笑)。

    冷静だけれど前向きですね…。転んでもタダでは起きないというか、諦めないというか(笑)。

    あはは、そうですね。小さい頃から「どんなことがあっても必ず解決方法がある」「死にゃしない」と思っていました。それから、目的のためになにをすればよいかを考えるのが得意な子だったように思います。いつも、いまなにをすべきか、その次にやるべきことはなにかを順序立てて考え、時間配分まで考慮していました。

    こうした考え方や性格は、恐らく、持って生まれたものなんじゃないかなあと思います。親の教育というわけでもないし、姉はどちらかというとおっとりした子どもでしたし。物心がついた頃からなぜかこういう性格で、それが、その後のダンス人生や現在の仕事に、大いに役立っていると感じています。

    ダンスの“縛り”に疑問を持ち、20歳できっぱりと習うことをやめた

    南さんは20歳のときに、衣装や演出などすべて自分たちで考えたオリジナルの路上ダンスパフォーマンスを始めていらっしゃいます。なぜ、小さい頃から習い続けていたバレエなどではなく“オリジナルのダンス”を発表しようと思われたのでしょうか?

    それはね、ずっとダンスに違和感を持っていたからなんです。クラシックなダンスには、厳しい規則や決まりきった型がありすぎる。比較的自由だとされているジャズバレエでさえ、海外で流行っているダンスをコピーするようなレッスンばかりでした。

    また、ダンスのオーディションが、身長や容姿で決まってしまうこともひっかかっていました。優れた技術や抜きん出た才能があっても、なかなか選んでもらえない。「本来、ダンスとは、もっと自由なものなんじゃないか?」、そんな思いで、20歳のとき、きっぱりと「ダンスを習うこと」と「オーディションを受けること」を辞めました。それで、仲間と一緒に路上で完全オリジナルのダンスパフォーマンスを行うようになったのです。

    いま思うと、「時代に乗っかるのではなく、時代をつくりたい」「自分のつくったものが時代になる」、そんな生き方をしたかったんだろうなと思います。だって、人に教えられ、人に与えられ、コピーし続ける人生って、辛いじゃないですか。いつも誰かと自分を比べながら、他人を追い続けなければいけません。でも、この世にないオリジナルのものだったら、比べようもないし、人を追う必要もありません。焦りや嫉妬心もまったくもって芽生えませんし、いつも明るくおおらかでいられます。「ないものをつくること」や「オリジナルであること」、それが人生そのものの喜びや輝きにつながると、私は信じています。

    「MOLLY DISCO」は、遊びと学びだけでなく、“喜び”を生むプログラム!

    常に喜びに向かって、エネルギッシュに挑戦を続ける南さん。2021年1月には、親子で楽しめるエデュテイメントダンス「MOLLY DISCO」を発表されました。「MOLLY DISCO」の概要や、特徴について教えてください。

    「MOLLY DISCO」は、脳科学理論の概念を採り入れて開発した、ただ楽しいだけで終わらない、学びと発見があるダンスプログラムです。脳科学の世界的権威である久保田競先生に監修していただき、まずは子どもたちが、繰り返し繰り返し踊り、思い切り楽しみながら短期記憶(ワーキングメモリ ※1)を強化できるように工夫した8分間のダンス動画を制作しました。

    8分間と聞くと「長い!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、子どもたちの集中力を引き出すため、あえて長めの尺に設定しています。また、4部構成にすることで、飽きずに楽しめるよう工夫しました。ほかに、大人が考える“子どもにとってわかりやすい解説”は極力入れないようにしています。子どもというのは、大人以上にいろいろなことを見て、感じて、知っているもの。押しつけがましい説明に興味を削がれている子も多いと思うんですよね。ですから、子どもを見くびらず、リスペクトして、いい意味でわかりやすくしないよう意識しました。振付も全体的に、ちょっぴり難しめになっています。

    もうひとつのポイントが、“動画だけで完結しないところ”です。動画を観たら、ぜひ南流石流「エデュテイメントダンスワークショップ」に参加してほしいと考えています。

    ワークショップでは、みんなで、楽しみながら、まずは振付を覚えます。その後、私をはじめとするインストラクターが、あえて、「あれ? 先生、振付忘れちゃった!」「誰か教えてくれないかな~?」と子どもたちに問いかけるのです。さらに、うまくできない子がいるときは他の子が教えてあげるように誘導しています。先生は極力”教えない”。これを徹底することで、子どもたちの集中力や短期記憶、ワーキングメモリがより強化され、なにより、教える喜びやみんなでできた喜びに満ちあふれた空気が生まれるんですよね。

    上から目線であれやこれやと物事を教えてしまうのは、大人が自分の喜びや達成感に浸っているだけ。遊びを「遊び」×「学び」にするには、教える側が意識を高め、確たるサポートスキルを養って子どもたちを支援することが欠かせません。まずは私たち大人が、もっと学び、成長しなければならないと思っています。

    上から目線であれやこれやと物事を教えてしまうのは、大人が自分の喜びや達成感に浸っているだけ。遊びを「遊び」×「学び」にするには、教える側が意識を高め、確たるサポートスキルを養って子どもたちを支援することが欠かせません。まずは私たち大人が、もっと学び、成長しなければならないと思っています。

    はい。もうね、踊りを教えたいとか、ダンスのスキルを上げてあげたいとかじゃないんです。私はただただ、喜びに向かいたいだけ。「もっと自由に発想していいんだよ」「自分の踊り方で人生を歩んで行っていいんだよ」ということを、子どもたちや高齢者をはじめとする多くの人たちに伝えたい。ですから「MOLLY DISCO」にも、私のテーマであり、愛や優しさの象徴でもある「ハグマイセルフ」のポーズを、冒頭と最後に入れているんですよ。

    今後も、「MOLLY DISCO」をはじめとするさまざまな取り組みを通して、人生そのものが大きな喜びに向かっていくような働きかけをし続けていきたい。ダンスを通して、少しでも優しく、悪意のない世界をつくることに寄与したいなと思っています。

    ※1 短期記憶(ワーキングメモリ)…計算や会話などの作業や動作に必要な情報を、一時的に記憶・処理する能力のこと

    掲載された情報はすべて記事公開日時点のものです。