イオンファンタジーのエデュテイメント
インタビュー
2021.04.16 UP
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活躍しつつ、ゴミ清掃員をしているという滝沢秀一さん。現在も、全国でゴミに関する講演を行ったり、著書を発行したりと、精力的に「清掃員から見たゴミ問題」について発信する活動を続けています。
そんな滝沢さんに、子ども時代の思い出や、清掃員として働いてみて驚いたこと、親子でできるリサイクルの工夫などについて語っていただきました。全国のイオンファンタジーで2021年3月から稼働する、遊びながらリサイクルについて学べるエディテインメントマシン「ぐるぐるリサイクルん」の感想も! ゴミとリサイクルについて幅広くお話をお聞きします。
1976年、東京都生まれ。1998年、相方である西堀亮さんとともにお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成する。芸人として活動しながら安定的に収入を得る目的で、2012年にゴミ収集会社に就職。ゴミ清掃の日常から垣間見える格差社会やゴミ問題をツイートし話題となった。近年は、お笑い芸人として磨いてきた話術と清掃員としての知識を活かした「ゴミ学講演」でも人気。著書に『このゴミは収集できません ゴミ清掃員が見たあり得ない光景』(白夜書房)、『ごみ育 日本一楽しいごみ分別の本』(太田出版)、『ゴミ清掃員の日常』(講談社)などがある。
太田プロダクション プロフィールページ
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いや、さすがに子どもの頃からゴミに興味があったわけではありません(笑)。小さいときはどちらかというと恥ずかしがり屋で、とてもシャイな性格でした。そして、とにかくお金がなかった。貧乏だったので、紙を丸めてセロテープでぐるぐる巻きにしてボールに見立てて、傘をバットにして、友だちと一緒に、よく「傘バット野球」をやっていました。グローブは、なんと、父親が手作りしてくれたダンボールのグローブ! ただ、これだと素材が硬すぎてボールがうまく取れないんですよね。仕方なく、ボールを叩き落としてからキャッチするという方法を編み出して遊んでいました(笑)。
子どもの頃から、新しいものを買うのではなく、「なにか既にあるもので代用できないかな」ということをよく考えていました。お金がなかったからそうせざるを得なかったんですが、「恥ずかしいな」とか「みじめだな」とか思ったことは全然ありませんでしたね。創意工夫さえあればなんでもできて、めちゃくちゃ楽しい、心豊かな遊びをしていたように思います。今振り返ると、そういう経験が、「ものを大切にする」「ゴミを出さない」みたいな考え方や、ゴミ清掃員の仕事につながっているのかもしれません。
母がお笑い好きでテレビでよくたけしさんの番組を観ていたので、その影響でしょうね。『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』や『ダウンタウンのごっつええ感じ』などなど……。ほかにもさんまさんや爆笑問題さん、あらゆる芸人さんの番組を、僕も観まくっていました。しかし、「お笑い芸人になる!」という覚悟はなかなか持てませんでした。実は僕、当時、東京都で6位を取るぐらい器械体操が得意でして、教師になって器械体操の指導をしたいという夢を持っていたんです。お笑いに憧れはあるけれど、教師になる夢もある。そんなこんなで迷いながら、大学に進学し教職の勉強をしていました。
で、「さあ、これから教育実習だ!」という段階になって、急に「やっぱりお笑い芸人になりたい!」と思っちゃったんです。「このまま教育実習に行ったら、普通に真面目な先生になってしまう!」という焦りが出てきたというか、後戻りできない不安が湧き上がってきたというか……。それで、直前で教育実習に行くのをやめて、自宅の電話線を切って音信不通状態になりました。親や学校は、それはもう大変なパニック状態でしたね。
その後、お笑いを勉強するため、まずは学費の安い東京・池袋のカルチャースクールに入りました。そこで相方の西堀亮に出会い、コンビを結成して、本格的に活動を開始。紆余曲折ありながらも現在に至っています。
妻が出産することになり、「出産費用を捻り出してこい!」と言われたからです(笑)。芸人としての稼ぎだけでは難しく、「じゃあバイトするか」と考えて、パン工場や居酒屋、カラオケ屋など、9社ほど受けました。ところがすべて落ちてしまった。36歳の芸人を受け入れてくれるところはなかなかありませんでした。結局、知人の口利きでゴミ清掃会社に入社することに。それで、ゴミ清掃員になったんです。
清掃員になってまずびっくりしたのがゴミの量。僕が所属している清掃会社では、1日6回、ゴミの回収を行います。ゴミ清掃車の容量は1台で2トン程度。ですから、たった1日で1台の車が約12トンのゴミを回収することになるわけです。清掃工場には、横幅40メートル、奥行き30メートル、深さ20メートルぐらいのゴミ箱があるんですけどね、これが毎日パンパンになるぐらいのゴミが出るんですよ。今日だけじゃなく、明日も明後日も、1年後もこれだけのゴミが出続けるんだろうなと思ったら、怖くなりました。「日本、ゴミで埋まるんじゃないかな」って。それが一番の驚きでした。
最近、目立つようになってきたのが「ファッション・ロス」、つまり洋服のゴミですね。異常です、本当に。たぶん使い捨ての感覚に近いんじゃないかな。安い服をワンシーズンだけ着て捨てるような生活が当たり前になっているんだろうなと思います。他に増えたと感じるのが「100均で売っているようなもの」。特に、プラスチックの整理カゴみたいなやつが異常に増えました。「100均で買ったやつだから別にもういいわ」って感じで簡単に捨てちゃうんでしょうね、きっと。こういうゴミを見ていると「わざわざお金を出してゴミを買っているようなもんだな」と思います。
そう、しかもそれが当たり前になっているんですよね。面白いなと感じるのが、そういうゴミが、高級住宅街ではあまり出ないところです。きっとお金持ちの人たちは、好きなものをちゃんと買って、愛着を持って長く使っているんでしょう。
ただ、「それはお金があるからできること、庶民である僕たちにはできっこない」とは思いません。ていねいにケアして工夫をすれば、服やモノはいくらでも長く使うことができますし、そもそも安かろうが高かろうが、必要なものだけを見極めて買っていれば無尽蔵にゴミが増えるということもありません。アメリカに、「愛しているものを命なくなるまで大切に使おう」っていう、「ラストロング」っていう思想があるんですけどね。僕、これ、本当にいい言葉だと思っていて。もっといろんな人に知ってほしいなと思っています。
まずはいらないものに囲まれない生活をすること。そしてその前に、いらないものを手に入れない努力をする、買うときに「捨てる」ってことを考えることが、大事なんじゃないかなあと思います。
まずはゴミの分別ですかね。ポイントは「あれをやれ、これをやれ」とうるさく指示を出すのではなくて、大人が楽しみながら分別を行うこと。毎日当たり前のように、「これはプラだな」とか「これは燃えるゴミね!」と言いながら仕分けしていれば、自然と子どもが真似するようになると思いますよ。ウチの8歳と4歳の子どもも、「これ、プラ?」「どっちに捨てればいい?」とどんどん聞いてくるようになりました。
あとはシュレッダーなんかもいいですね。子どもはああいう機械が大好きですから。ちなみに僕は、シュレッダーを使う前に、例えば封筒から住所の部分だけハサミで切っておくなどの下準備をしています。切り取った住所部分だけを子どもたちと一緒にシュレッダーにかけて、残りの封筒は資源へ。そうすると、燃えるゴミを減らすことができますからね。
こういうことを、親子で会話しながら、楽しんでやっていくといいんじゃないかな。
そうですね。勉強云々より、まず楽しめるという点でとてもいいと思いました。ゴミ問題がどうとか、リサイクルがどうとか、そんなことはわからなくても構わない。ただ純粋に、ボールをゴミに見立てて指定されたボックスに入れていくという玉入れゲームを楽しんでもらいたいなと思いました。そのなかで、「なんかリサイクルって言葉があるんだな」と知ってくれれば、それでいいと思います。だって、楽しいことじゃないと続きませんから。まずは「楽しい」、それだけで十分だと思いますよ。
僕の目標は、「日本からゴミをなくすこと」。世の中にゴミとして生まれたものはひとつもありません。人間がゴミだと決めた瞬間に、それはゴミになる。ゴミにするかどうかは人次第なんです。ですから、モノを使う僕たちが考え方を変えれば、ゴミと呼ばれるものは限りなく少なくすることができるのではないかと思っています。これからも、清掃の現場で見たことや感じたことを積極的に発信していって、ゴミを減らすことに貢献したいと思っています。
思えば売れない芸人である僕が、ゴミ清掃の仕事をきっかけにして、講演やこうした取材に呼んでいただいているというのも、ある意味、「人のリサイクル」なのかもしれませんしね。モノも人もリサイクル。そうやって、みんなが活かされる、ゴミのない、ハッピーな世の中が実現できるといいなと、本気で思っています。
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