ゲームが社会問題の解決につながる。「シリアスゲーム」とは?

「シリアスゲーム」という言葉を聞いたことがありますか?あまりなじみのない言葉かもしれませんね。

近年、様々な分野で、ゲームを活用して社会の諸問題を解決していこうという動きが見られます。

そこで今回は、シリアスゲームとはどういったものなのか、具体的にどのような例があるのかについて解説していきます。

シリアスゲームとは

シリアスゲームとはそもそもどういうものなのでしょうか?ゲーム学習論の専門家であり、東京大学准教授の藤本徹氏は著書『シリアスゲーム』の中で、「教育をはじめとする社会の諸問題の問題解決のために利用される(デジタル)ゲーム」と定義しています。

そして、このシリアスゲームの定義では、次のような3つの基本的前提が含まれているそうです。

3つの基本的前提

(1)エンターテイメント以外の用途にデジタルゲームが利用可能で、社会的な問題解決に有効であること。
(2)従来の教育用ゲームの枠を超えて、教育以外の用途でのデジタルゲーム利用を視野に入れていること。
(3)ゲームソフトウェアの開発だけでなく、その利用方法の開発も同様に重要であること。

また、シリアスゲームが提唱された当時はデジタルゲームを用いた取り組みが中心だったことからこの定義上も「デジタルゲーム」とされていましたが、その後カードゲームやボードゲームのようなアナログゲームの事例もシリアスゲームとして位置付けられるようになりました。

この基本的前提をもとに、シリアスゲームの定義を考えていく際には、次に述べるような、広義のシリアスゲームの定義と狭義でのシリアスゲームの定義があるそうです。

広義のシリアスゲーム

藤本氏によれば、広義の定義は「すべてのゲームはシリアスだ」という考え方だそう。

たとえ、もともと娯楽用途で作られたゲームであっても、すべてのゲームには思考力向上やコミュニケーション能力向上につながるなどのさまざまな効果があり、あらゆるゲームに「シリアスゲーム」のシリアスな(真面目な)要素は存在するといいます。

狭義のシリアスゲーム

また、狭義には(1)ゲームの開発・利用にエンターテインメント以外の特定用途で利用する意図があり、(2)その意図がゲームプレイに関係する形でデザインされた、ゲームの利用・開発のことだそうです。

つまり、シリアスゲームとしての利用意図があり、かつ、そういった利用意図をデザインに反映させたものが狭義のシリアスゲームなのです。

話題のドラマ『アトムの童』ではシリアスゲームが題材に

日曜劇場『アトムの童』©︎TBSの、作中で開発されたのがこの記事でもご紹介している「シリアスゲーム」です。

山﨑賢人さん扮する主人公の安積那由他は、個人でゲームを制作する天才ゲーム開発者。
開発したゲームが子どもの保護者から反対される中、娯楽としてだけのゲームではなく、教育・啓発を目的とし社会課題の解決を目指すシリアスゲームを開発していくという話がありました。

ゲームが娯楽だけのものではないということが、わかりやすく表現されていましたね。

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シリアスゲームと似た概念「エデュテインメント」

シリアスゲームと似た概念に、エデュテインメントというものがあります。

ここでは、その違いについて解説していきます。
エデュテインメントとは、エデュケーションとエンターテインメントを組み合わせた造語で、要するに、教育に遊びを取り入れて楽しく学ぶことを目的とする取り組みです。

エデュテインメントはシリアスゲームとよく似た概念ですが、藤本氏は、エデュテインメントではなくシリアスゲームというコンセプトが必要になった背景として、3つの理由があると言います。

1.対象とする分野の広がり

まず、1つ目の理由として「対象とする分野の広がり」があげられます。

エデュテインメントは主に、学校教育分野を対象としていましたが、高等教育分野や軍事分野などへのゲーム利用が注目されるにつれ、他の様々な分野もカバーするようなコンセプトが必要になったという経緯がありました。

2.土台とする技術の違い

2つ目の理由は「土台とする技術の違い」です。

かつてはゲームデザインや教材としてのデザインの技術が未熟だったため、エデュテインメントとして出てきたコンテンツは、アニメーションや簡単なゲームを付加したドリル教材、クイズ教材的なものばかりだったそう。

しかし、近年では、情報通信技術、コンピュータの処理速度や描画能力など、様々な点で大きな進歩が見られたために、コンテンツのクオリティが格段に上がりました。

そのため、このコンテンツのクオリティの違いを表現するためにエデュテインメントとは違った概念が必要になりました。

3.エデュテインメントという言葉の陳腐化

3つ目の理由は「エデュテインメントという言葉の陳腐化」です。

つまり、エデュテインメントという言葉自体が古い言葉になってしまったのです。

特にアメリカでは、エデュテインメントという言葉は「すでに消費されて手垢のついてしまったマーケティング用語」という認識をされる傾向があり、エデュテインメントという言葉を使うことで「子どもっぽいテイストのドリルやクイズにゲームがくっついたもの」という固定観念的なイメージによって、逆にマイナスになってしまうという状況があるそう。

こういった理由から、似た概念ではあれど、エデュテインメントではなくシリアスゲームというコンセプトが必要になってきたのです。

シリアスゲームの例

ここまで、シリアスゲームの定義やエデュテインメントとの違いについて解説してきました。
では、シリアスゲームは実際、どのような場所で活用されているのでしょうか。

ここからは、シリアスゲームの具体例をいくつか紹介したいと思います。

ゲーム×医療

まずはじめに、ゲームの医療分野への活用事例を紹介します。

九州大学大学院システム情報科学府の杉村氏らは、2013年に細菌学に関するゲーム、2014年に解剖学に関するゲームを開発し、医学生を対象としてその教育効果を検証しました。

研究では、ゲームと本で学習するグループと本のみで学習するグループに分けて、事前テスト→学習→事後テスト→アンケートの順番で行われた。

その結果、細菌学と解剖学いずれにおいても、ゲームを利用したグループの方が優位な結果が得られ、この研究で使用されたシリアスゲームは一定の効果があることが証明されました。

ゲーム×防衛産業

次に、ゲームの防衛産業への活用事例を紹介します。

たとえば、自衛隊などでは、M&S(モデリング&シミュレーション)といって、訓練に実際の戦争を再現したようなシミュレーションゲームが活用されています。

そして、M&Sの活用によって、物事を現実的に表現した、現実の訓練よりも安い、効率的な訓練を実現できています。

ゲーム×ビジネス

最後に、ゲームのビジネス分野への活用事例を紹介します。

シリアスゲームが提唱される以前から、ビジネスゲームと呼ばれる、ビジネスの様々な場面を想定し、シミュレーションするゲームを通して、ビジネスの基本的な考え方や必要なスキルを間接的に学ぶゲームが研修などで活用されています。

これらもシリアスゲームとして認識されて、導入される分野が拡がりました。ゲームを研修に取り入れることによって、社内コミュニケーションの活性化や社員のモチベーション向上など多くのメリットが見込まれ、結果として、ビジネスに必要なスキルを効率よく身につけることができます。

今回は、シリアスゲームとはどのようなものか、その具体例について解説しました。
「もともとはただの娯楽であったゲームがこんなに幅広い分野で使われているなんて」と驚いた方も多いのではないでしょうか。

みなさんも是非いろんな場面でゲームを活用してみてください。

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(出典)
『シリアスゲーム』

情報処理学会研究報告│医療教材としてのシリアスゲームの開発と評価、その中等教育への応用の検証

自衛隊や国防総省の訓練用のゲームであるウォーゲーム業界の内幕
ジェイブレインホールディングス 蔵原大氏

ビジネスゲーム研修とは?実施するメリットやプログラム例を紹介
Schoo foe Business

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株式会社ENロジカル
京都大学医学部医学研究科在学中に脳神経の形成機構の研究に従事。
在学中に起業し、事業売却を経験。
自身もwebのディレクターとして従事し、経営する会社ではいくつものwebメディアを運営している。
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